COLUMNコラム
海外調査とは?失敗しない海外市場調査の方法と注意点を徹底解説
海外進出や新商品展開における「見えないリスク」を解消するために
「海外市場に進出したいが、現地のニーズが掴めていない」「競合他社の動向や商習慣が日本とどう違うのか分からない」……。 グローバル展開を検討する際、こうした不安や課題を抱えていませんか?
この記事では、海外調査(海外市場調査)の基礎知識から、具体的な調査手法、失敗しないための重要なポイントや注意点について詳しく解説します。現地のリアルな情報を正しく掴み、事業を成功させるための羅針盤としてお役立てください。
海外調査(グローバルリサーチ)とは?なぜ重要なのか
海外調査とは、日本国外の市場動向、消費者の意識・行動、競合環境などを把握するために行うマーケティングリサーチのことです。「グローバルリサーチ」とも呼ばれます。
日本国内で成功した商品やサービスが、そのまま海外で受け入れられるとは限りません。国や地域によって、気候、宗教、生活習慣、所得水準、法規制などが大きく異なるためです。
例えば、日本では高品質・高機能が好まれる家電製品でも、新興国では「単機能で壊れにくく、安価なもの」が求められるケースがあります。また、パッケージの色一つとっても、ある国では「幸運の色」であっても、別の国では「不吉な色」とされることもあります。
海外調査を行う最大の目的は、こうした「日本基準の思い込み」を排除し、事実(データ)に基づいた意思決定を行うことで、ビジネスのリスクを最小化することにあります。
実際に、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査レポートなどを見ても、事前の市場調査不足が原因で撤退を余儀なくされる事例は後を絶ちません。成功確率を高めるためには、本格参入前の綿密なリサーチが不可欠です。
※参考:ジェトロ(日本貿易振興機構)- 海外ビジネス・地域別情報
海外市場調査の主な手法と使い分け
海外調査の手法は、大きく分けて「デスクリサーチ」「定量調査」「定性調査」の3つがあります。予算や知りたい情報の深さに応じて、これらを適切に使い分ける、あるいは組み合わせることが重要です。
デスクリサーチ(二次データ収集)
デスクリサーチは、すでに公開されている統計データやレポート、ニュース記事などを収集・分析する手法です。現地に行かずともインターネットやデータベースを通じて情報を得られるため、低コストかつ短期間で実施できます。
【活用シーン】
- 対象国の人口動態、GDP、経済成長率などのマクロ環境把握
- 法規制や税制の基礎情報の確認
- 主要な競合プレイヤーの洗い出し
初期段階のフィジビリティスタディ(実現可能性調査)として、まず最初に取り組むべき手法です。ただし、公開情報はあくまで「過去のデータ」や「一般的な情報」であるため、自社商品に対する具体的なニーズまでは分からない点に注意が必要です。
定量調査(ネットリサーチ・アンケート)
定量調査は、数多くの対象者にアンケートを行い、数値を基に全体像を把握する手法です。海外調査においては、インターネットを用いたオンラインパネル調査が主流です。
【活用シーン】
- 市場規模の推計
- ブランド認知度や利用率の測定
- 商品コンセプトの受容性確認(何%が買いたいと言っているか)
- 価格受容性の調査(いくらなら買うか)
数百人から数千人の回答を集めることで、統計的に信頼できるデータを得られます。最近では、世界各国の消費者パネルを持つ調査会社を通じて、日本にいながらスピーディーに各国の生の声を集めることが可能になっています。
定性調査(インタビュー・現地視察・FGI)
定性調査は、対象者の「言葉」「行動」「感情」といった数値化できない情報を深掘りする手法です。1対1のデプスインタビューや、数名で話し合うグループインタビュー(FGI)、調査員が現地家庭を訪問するホームユーステストなどがあります。
【活用シーン】
- なぜその商品を買うのか(買わないのか)という「理由」の解明
- 現地の生活実態や使用環境の観察(キッチンの広さ、収納方法など)
- 未充足ニーズ(インサイト)の発見
定量調査で「Aという商品が人気」という結果が出たとして、定性調査では「なぜ人気なのか」という背景(文化的要因やライフスタイル)を突き止めることができます。
失敗しない海外調査の進め方・4つのステップ
海外調査は国内調査に比べてコストも時間もかかります。失敗を防ぐために、以下の4つのステップを確実に踏むことが大切です。
ステップ1:調査目的と仮説の明確化
「とりあえず現地の様子が知りたい」という曖昧な目的では、散漫なデータしか集まりません。「新商品XのパッケージデザインA案とB案、どちらが30代女性に好まれるか」「現地の競合Y社に勝つための価格帯はどこか」など、何を決めるための調査なのかを具体化しましょう。
また、事前に「現地の人はこういう傾向があるのではないか」という仮説を立てておくことで、調査の焦点が定まり、分析の精度が向上します。
ステップ2:ターゲット国と対象者の詳細設定
「アメリカ市場を調査したい」といっても、ニューヨークとテキサスではライフスタイルも考え方も全く異なります。中国であれば、沿岸部と内陸部で所得格差が大きいため、ターゲットエリアを絞り込む必要があります。
対象者(回答者)の条件も重要です。性別・年代だけでなく、世帯年収、職業、ライフステージなど、自社のターゲット層に合わせて細かくスクリーニング条件を設定します。
ステップ3:調査票の設計とローカライズ(翻訳)
ここが最も重要なポイントです。日本語の調査票をそのまま現地の言葉に翻訳するだけでは、意図が正しく伝わらないことが多々あります。
例えば、「あたたかみのある色」という表現一つでも、国によって想起する色は異なります。また、選択肢のスケール(「非常に良い」~「非常に悪い」)の捉え方も、国民性によって「極端な回答を避ける」「ポジティブに回答しがち」といったバイアスがかかります。
単なる翻訳ではなく、現地の文化的背景を踏まえた「ローカライズ(最適化)」を行うことが、正確なデータを取る鍵となります。
ステップ4:実査と分析・レポート化
調査を実施(実査)し、回収したデータを分析します。海外調査の分析では、得られた数値を日本基準で評価しないよう注意が必要です。
例えば、「購入意向70%」という結果が出た場合、日本では「大ヒット確実」かもしれませんが、新しいもの好きで肯定的な回答が多い国では「標準的な数値」かもしれません。各国のベンチマークデータと比較しながら、冷静に解釈する必要があります。
海外調査を行う際の注意点とリスク
海外調査には、国内調査にはない特有の落とし穴があります。
文化・宗教・商習慣の違い(コンテキスト)
宗教上のタブー(ハラールやカシュルートなど)や、ジェンダーに関する考え方、政治的なセンシティビティには細心の注意が必要です。 質問文の中に、特定の宗教や文化を不快にさせる表現が含まれていないか、現地事情に精通したネイティブによるチェックが必須です。また、謝礼(インセンティブ)の渡し方も国によって適切な方法が異なります。
法規制と個人情報保護(GDPR・CCPAなど)
特に欧州のGDPR(一般データ保護規則)や、米国カリフォルニア州のCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)など、個人情報の取り扱いに関する規制は年々厳格化しています。
違反した場合、巨額の制裁金を科されるリスクがあります。自社だけで調査を行う場合、これらの法規制をすべて把握するのは困難です。各国の法規制に準拠したシステムと運用体制を持つ調査会社を利用することが、リスク回避の最善策です。
時差とスケジュールの管理(祝日・イベント)
調査スケジュールを組む際は、現地のカレンダーを確認しましょう。 中国の春節(旧正月)、イスラム圏のラマダン(断食月)、欧米のクリスマス休暇などの期間中は、調査の回答率が極端に下がったり、ビジネスがストップしたりします。また、時差があるため、現地とのやり取りに想定以上の時間がかかることも考慮して、余裕を持ったスケジュールを引くことが大切です。
調査会社に依頼するメリット
ここまで解説した通り、海外調査には専門的なノウハウと多大なリソースが必要です。自社ですべてを行うことも可能ですが、プロの調査会社に依頼することで以下のようなメリットが得られます。
| 高品質なデータ収集 | 現地の信頼できるパートナーやパネルネットワークを活用し、質の高い回答者を確保できます。 |
|---|---|
| 適切なローカライズ | 現地の文化や文脈を理解したネイティブスタッフが、違和感のない調査票を作成します。 |
| 法的リスクの回避 | 各国の個人情報保護法やリサーチ関連法規を遵守した運用が可能です。 |
| 客観的な分析 | 第三者視点での分析により、社内のバイアス(「こうあってほしい」という願望)を排除した、 精度の高いレポートが得られます。 |
特に、初めて進出する国や地域の場合、現地の商習慣に精通したパートナーの存在は、調査だけでなくその後の事業展開においても大きな資産となります。
まとめ
海外調査は、グローバルビジネスの成功率を高めるための投資です。闇雲に進出するのではなく、市場の事実を掴むことで、勝てる戦略を描くことができます。
- 目的の明確化:何を知るための調査か、仮説を立てる。
- 手法の使い分け:デスクリサーチ、定量、定性を適切に組み合わせる。
- ローカライズ:単なる翻訳ではなく、文化的背景を考慮した調査票を作る。
- リスク管理:法規制や商習慣の違いをプロの視点でカバーする。
現地のリアルな「声」を拾い上げ、確実な一歩を踏み出しましょう。
市場調査の目的に合わせた最適な調査設計をご提案します。 まずは無料相談をご活用ください。
よくある質問(FAQ)
Q:海外調査の費用感はどれくらいですか?
A:調査手法(ネットリサーチかインタビューか)、対象国、サンプル数、質問数によって大きく異なります。簡易なネットリサーチであれば数十万円から可能ですが、詳細なインタビューや複数国調査の場合は数百万円になることもあります。まずは予算感をお伝えいただき、最適なプランを相談することをお勧めします。
Q:どこの国でも調査可能ですか?
A:RJCリサーチでは、欧州・中国・アジア・オセアニアなど、世界主要国での調査に対応可能です。新興国や特殊な地域についても、現地のパートナーネットワークを通じて調査可能な場合がありますので、お気軽にお問い合わせください。
Q:調査票の翻訳もお願いできますか?
A:はい、可能です。単に言語を翻訳するだけでなく、リサーチの専門知識を持ったネイティブスタッフが、現地の消費者に誤解なく伝わるような表現への「ローカライズ」を行います。
Q:調査期間はどれくらいかかりますか?
A:ネットリサーチの場合、実査開始からデータ納品まで最短で1〜2週間程度で可能な場合もあります。定性調査や複雑な設計が必要な場合は、1〜2ヶ月程度かかることが一般的です。
Q:自社商品の海外での受容性を知りたいのですが、どの調査が良いですか?
A:まずは定量調査(ネットリサーチ)でターゲット層への受容性や価格感を数値で把握し、必要に応じて定性調査(インタビュー)で具体的な改善点や使用シーンを深掘りする流れが一般的でおすすめです。
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