COLUMN

2026/01/28

評価アンケートの設計方法5ステップ|質問項目や分析のコツを事例で解説

評価アンケートの目的と重要性

市場調査において、製品やサービスの評価アンケートを実施する最大の目的は、「顧客の声を定量化し、客観的なデータに基づいて次の戦略を決定すること」にあります。

多くの企業が陥りがちなのが、「とりあえずお客様の声を聞いてみよう」と目的が曖昧なままアンケートを開始してしまうことです。これでは、集まったデータを見ても「ふーん、そうなんだ」で終わってしまい、具体的な改善策に落とし込めません。これはいわゆる「聞きっぱなしアンケート」と呼ばれる状態で、予算と時間の無駄になってしまいます。 

評価アンケートは、単なる「感想集め」ではありません。 製品の機能、価格、デザイン、サポート体制など、どの要素が顧客満足度に寄与しているのか、あるいは解約の原因になっているのかを特定するための「診断ツール」です。 

 

アンケート設計の5つのステップ

効果的な市場調査を行うためには、質問文を作る前にしっかりとした「設計図」を描く必要があります。家を建てる時にいきなり柱を立てないのと同様、アンケートも設計が命です。ここでは、プロが実践する5つのステップを解説します。 

 

①調査目的の明確化(KGI・KPI設定)

まず、「この調査で何を明らかにしたいのか」を徹底的に言語化します。ここがスタートラインです。 

  • 現状把握:リニューアル前の現行製品の不満点を洗い出し、改良の優先順位をつけたいのか? 
  • 仮説検証:「価格が高すぎて購入に至らないのではないか」「使い方が難しすぎて離脱しているのではないか」という仮説を白黒つけたいのか? 
  • 効果測定:テレビCMやWebキャンペーン後のブランド認知度の変化を数値で知りたいのか? 

ここがブレていると、あれもこれもと質問数が無駄に増え、回答者の負担が増すだけで、肝心なデータが得られません。 調査のゴール(KGI:例として売上向上や解約率低下など)と、それを判断するための指標(KPI:例として満足度スコアや推奨意向)を最初に決めましょう。 

 

②ターゲット設定(誰に聞くか)

次に、「誰の評価」が欲しいのかを定義します。 「顧客全員」という設定は、多くの場合失敗します。全ユーザーを対象にするのか、特定のプランを利用しているユーザーなのか、あるいは解約したユーザーなのかによって、聞くべき内容は全く異なるからです。 

  • ロイヤルカスタマー:自社の強みや継続理由を探り、訴求ポイントを強化するために聞く。 
  • 休眠顧客:離脱理由や再利用の条件を探り、呼び戻し施策を作るために聞く。 
  • 新規顧客:認知経路や購入の決め手を探り、マーケティングチャネルを最適化するために聞く。 

ターゲット属性(性別・年代・居住地などのデモグラフィック属性)と行動属性(利用頻度・利用金額・契約期間など)を掛け合わせて、最適な調査対象者(サンプル)を抽出します。 例えば、BtoBサービスであれば「決裁者」に聞くのか「現場の担当者」に聞くのかでも、評価軸は大きく変わります。 

 

③調査項目の選定(何を評価するか)

目的とターゲットが決まったら、評価すべき具体的な項目をリストアップします。これを「調査票構成案」と呼びます。いきなり質問文を作るのではなく、要素を分解する作業です。 

例えば「ECサイトの使いやすさ」を評価する場合、単に「使いやすいですか?」と聞くのはNGです。以下のように分解します。 

  • 商品検索のしやすさ(キーワード検索、絞り込み機能) 
  • 商品画像の鮮明さ・情報量 
  • 説明文の分かりやすさ 
  • 決済手続きの簡便さ 
  • 配送スピード・梱包の状態 

要素を細かく分解することで、「商品は魅力的だが、決済画面が使いにくい」といった具体的なボトルネックを発見できます。これを「全体満足度」と「個別満足度」の相関分析にかけることで、優先的に改善すべき項目が見えてきます。 

 

④質問票の作成(ワーディングのコツ)

ここでは、具体的な質問文を作成します。リサーチャーの腕の見せ所です。 最も重要なのは「バイアス(偏り)」を避けることです。 

  • 悪い例(誘導尋問):「この製品は使いやすいと思いましたか?」 

これは「はい」と言わせようとする圧力がかかりやすく、正確なデータが取れません。 

  • 良い例(中立的):「この製品の使いやすさについて、どのように感じましたか?」 

選択肢:非常に使いやすい 〜 全く使いにくい の5段階評価などを用意します。 

また、専門用語は避け、誰が読んでも同じ意味に捉えられる平易な言葉を選びます。 特に注意すべきは「ダブルバーレル質問」です。1つの質問の中に2つの論点を入れてしまうことです。 

もし「いいえ」と答えられた場合、「遅かった」のか「雑だった」のか判断できなくなるため、必ず分けましょう。 

 

⑤分析手法の決定

アンケートを実施する前に、集まったデータをどう分析するかも決めておきます。出口戦略のない調査は迷走します。 

  • 単純集計(GT:グランドトータル):全体の傾向をつかむ。「満足している人が60%」など。 
  • クロス集計:年代別、性別、利用頻度別などで傾向の違いを見る。「20代は満足しているが、50代は不満が高い」など。 
  • 多変量解析:満足度に影響を与えている要因の重み付けを行う(CSポートフォリオ分析など)。 

どのようなグラフを出力して、どのようなレポートを作成するか、アウトプットイメージを持っておくことで、必要な質問項目が漏れることを防げます。 

 

評価に欠かせない主要指標(NPS・CSAT)

製品やサービスの評価を数値化する際、世界的に使われている標準的な指標があります。これらを組み込むことで、自社の過去データとの比較や、競合他社との比較(ベンチマーク)が容易になります。 

 

NPS(ネット・プロモーター・スコア)

NPS(Net Promoter Score)は「顧客ロイヤルティ(愛着度・推奨意向)」を測る指標です。 

  • 質問例:「この製品・サービスを親しい友人や同僚に勧める可能性はどのくらいありますか?」(0〜10点の11段階評価) 

回答者は以下の3つに分類されます。 

スコア区分英語名称特徴
9〜10点推奨者プロモーター(Promoter)リピート購入し、他者へ積極的に勧めてくれる層
7〜8点中立者パッシブ(Passive)満足はしているが、競合他社へ流れる可能性もある層
0〜6点批判者デトラクター(Detractor)不満を持ち、悪評を広める可能性がある層

NPSは、推奨者の割合から批判者の割合を引いて算出します。この数値は企業の成長率と高い相関関係があると言われており、多くの企業で最重要KPIとして導入されています。 

 

CS(顧客満足度)

CS(Customer Satisfaction)は、特定の体験に対する一時的な満足度を測ります。 

質問例:「今回のお問い合わせ対応について、満足度を教えてください」(大変満足〜大変不満 の5段階または7段階評価) 

NPSが「ブランド全体への長期的な信頼」を測るのに対し、CSは「個別のタッチポイント(接点)の評価」に適しています。直近の改善施策の効果を確認する場合や、イベント直後の評価など短期的な視点で有効です。 

参考:経済産業省等の資料でも、サービス産業における顧客満足度指標(CSI)の活用が推奨されています。 

 

CES(顧客努力指標)

CES(Customer Effort Score)は、顧客が目的を達成するためにどれだけの手間(ストレス)を感じたかを測ります。 

質問例:「問題を解決するために、どれくらい手間がかかりましたか?」 

特にカスタマーサポートやWebサイトのUI/UX評価において重要視されています。「感動的なサービス」よりも「手間の少なさ(エフォートレス)」がリピート率に大きく影響するという研究結果もあり、近年注目されている指標です。 

 

回答率と精度を高めるテクニック

どんなに優れた設計でも、回答が集まらなければ意味がありません。また、適当に回答されてしまってはデータの信頼性が損なわれます。ここでは実査におけるテクニックを紹介します。 

1. 設問数は極力減らす 回答所要時間は3分〜5分以内が理想です。スマートフォンでの回答が主流のため、スクロールが長すぎると離脱の原因になります。本当に必要な「必須項目」と、聞けたら聞く「任意項目」を厳選しましょう。 

2. 選択肢の網羅性と排他性(MECE)選択肢で「その他」が多く選ばれる場合は、設計不足の可能性があります。主要な回答を選択肢として用意しておく必要があります。また、選択肢同士が重複しないように注意します。 

3. インセンティブの活用 回答者への謝礼(ポイントやクーポン、デジタルギフトなど)を用意することで、回答率は向上します。ただし、謝礼目当ての「適当回答」が増えるリスクもあるため、設問内にトラップ設問(「この質問には『いいえ』を選んでください」など)を入れ、データをクリーニングする工夫も必要です。 

4. 実施タイミングの最適化 「鉄は熱いうちに打て」の通り、サービス利用直後(サンキューページや直後のメール)が最も記憶が鮮明で回答率が高くなります。時間が経つほど回答意欲は低下し、記憶も曖昧になります。 

 

調査会社を活用するメリットと事例

ここまで自社で設計する方法を解説してきましたが、市場調査のプロである調査会社に依頼することで、より精度の高い結果を得ることができます。 

メリット: 

第三者視点での設計:社内バイアスのかからない客観的な設問設計が可能。 

高度な分析:統計ソフトを用いた多変量解析(コレスポンデンス分析など)やテキストマイニングなど、深いインサイト発掘が可能。 

大規模パネルの活用:自社顧客だけでなく、競合他社のユーザーや、まだ接点のない潜在顧客の評価も調査できる(モニター調査)。 

成功事例: ある食品メーカーでは、新商品のリピート率が伸び悩んでいました。自社アンケートでは「味が美味しい」という高評価ばかりでしたが、売上は伸びません。 そこで、調査会社による詳細な定量調査と、実際の利用シーンを観察する定性調査を組み合わせました。すると、「パッケージが開けにくい」「冷蔵庫で保存しにくい」という使用感の不満がリピート阻害要因であることが判明しました。 この結果を基にパッケージ改良を行ったところ、リピート率が1.5倍に向上しました。 

このように、プロの視点を入れることで、見落としていた「真の課題」を発見できるのが大きな強みです。 

 

まとめ

評価アンケートは、顧客の本音を引き出し、製品・サービスを次のステージへ引き上げるための強力なツールです。 

  • 目的とターゲットを明確にすることから始める。 
  • NPSやCSなどの標準指標を取り入れ、定点観測を行う。 
  • 誘導尋問を避け、客観的なデータを収集する設計を行う。 
  • 分析まで見据えて設問を構成する。 

しかし、社内リソースだけで精度の高い調査設計から分析までを行うのは、時間もノウハウも必要であり、ハードルが高いのも事実です。 「自社の課題に合わせた最適な調査票を作りたい」「集まったデータを深く分析して、具体的な改善策まで提言してほしい」 このようにお考えでしたら、ぜひ専門家の手をお借りください。 

RJCリサーチでは、長年の実績に基づいたノウハウで、貴社の課題解決に直結する市場調査をトータルサポートいたします。 

市場調査の目的に合わせた最適な調査設計をご提案します。 まずは無料相談をご活用ください。 

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よくある質問(FAQ)

Q. 評価アンケートの回答数はどれくらい必要ですか?

 A. 目的によりますが、統計的な信頼性を確保するためには、最低でも100サンプル、可能であれば400サンプル以上が望ましいとされています。400サンプル程度あれば、一般的には誤差を±5%前後に抑えられるとされています。クロス集計(年代別など)を行う場合は、各セグメントごとに一定の数(最低30〜50程度)が必要です。 

 

Q. 定性調査と定量調査、どちらを行うべきですか?

 A. 目的によって使い分けます。全体の傾向や満足度を数値で把握したい場合は「定量調査(アンケート)」が適しています。一方、数値では表れない具体的な不満理由、利用背景、無意識の行動などを深掘りしたい場合は「定性調査(インタビューや行動観察)」が適しています。両方を組み合わせることで、より深い理解が得られます。 

 

Q. 調査にかかる期間と費用の相場は?

 A. ネットリサーチの場合、設問数やサンプル数によりますが、最短数日で結果納品が可能です。費用は簡易なもので数万円から、大規模なものでは数百万円と幅広いため、まずは見積もりを取ることをおすすめします。弊社ではご予算に合わせた最適なプランをご提案可能です。 

 

Q. 自社リストへの配信とモニター調査、どちらが良いですか?

 A. 既存顧客の満足度を知りたいなら「自社リスト(ハウスリスト)」への配信が最適です。一方、まだ接点のない潜在顧客のニーズや、競合他社の利用状況を知りたいなら「モニター調査」が必要です。RJCリサーチなどの調査会社は大規模なモニターパネルを保有しており、条件に合った対象者を抽出できます。 

 

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