COLUMNコラム
電話調査の費用相場とメリット・デメリットを解説!Web調査との違いや実施フローも紹介
電話調査とは?いま再注目される理由
電話調査(テレフォンリサーチ)とは、調査員(オペレーター)が対象者に直接電話をかけ、用意された質問項目に従って回答を聞き取る調査手法です。
かつては世論調査の主流でしたが、インターネット調査の普及により一時は減少傾向にありました。しかし近年、「Webでは届かない声」を重視する企業が増え、その価値が再評価されています。
電話調査の基本的な仕組み
電話調査には大きく分けて2つのアプローチがあります。
1. RDD方式(Random Digit Dialing): コンピューターで電話番号を無作為に発生させて電話をかける手法です。電話帳に掲載されていない番号も含めてアプローチできるため、統計的に偏りの少ないサンプルを抽出することが可能です。主に「世論調査」や「選挙情勢調査」、「知名度調査」など、一般消費者の意識を広く把握したい場合に用いられます。近年では固定電話だけでなく、携帯電話の番号を生成して架電する手法も一般的になっています。
2. リスト方式 : 顧客リストや企業データベースなど、あらかじめ用意された名簿(リスト)に基づいて電話をかける手法です。
- 既存顧客への満足度調査(CS調査)
- 特定業種の企業に対するB2B調査
- 休眠顧客への利用意向調査
このように、ターゲットが明確に決まっている場合に非常に有効です。Webアンケートでは回答してくれない多忙なビジネスパーソンや、メールを見ない層に対しても、直接対話することで回答を引き出せる可能性が高まります。
インターネット調査との違い
インターネット調査は「安価・大量・高速」が特徴ですが、回答者が能動的に画面を操作する必要があります。
一方、電話調査は「対話」がベースです。
電話調査を実施する5つのメリット
なぜ、コストをかけてまで電話調査を選ぶ企業があるのでしょうか。
そこにはWeb調査では代替できない明確なメリットがあるからです。
インターネットを使わない層(高齢者等)にアプローチ可能
最大のメリットは、デジタルデバイド(情報格差)の解消です。 60代以上のシニア層や、地方在住者など、日常的にスマートフォンやPCを利用しない層の意見を吸い上げるには、電話調査が最も有効です。食品、健康食品、介護サービス、行政サービスなどの分野では必須の手法と言えます。
詳しくは総務省の通信利用動向調査などでも、年代別のインターネット利用率の差が確認できます。 (参考:総務省|通信利用動向調査)
回答の信頼性が高い(本人確認・なりすまし防止)
Webアンケートでは、ポイント目的の適当な回答や、属性を偽った回答(なりすまし)が混入するリスクがあります。 電話調査では、オペレーターが直接会話を行うため、本人が回答しているかどうかの確認が容易です。明らかに矛盾した回答があればその場で確認できるため、データの精度(信頼性)が格段に高まります。
具体的で深い意見(定性情報)を引き出しやすい
選択式のアンケートでは「満足」「不満」という結果しか分かりませんが、電話調査では「なぜそう思ったのか」という理由を深掘りできます。 「声のトーン」や「間」から感情の機微を読み取り、「具体的にはどのような場面で使いにくいと感じましたか?」といった追加質問(プロービング)を行うことで、商品改善に直結する定性データを得ることができます。
複雑な質問でもフォローが可能
新商品のコンセプト評価や、複雑なBtoBサービスの導入状況調査など、質問内容が難解な場合、Web画面上の文字だけでは意図が伝わらないことがあります。 電話であれば、オペレーターが補足説明を行い、相手の理解度に合わせて質問を投げかけることができます。これにより、勘違いによる誤回答を防げます。
高い回答回収率を維持できる(特にBtoB)
企業向けの調査において、メールで送られたアンケートURLは忙しい担当者に無視されがちです。 しかし、電話であれば担当者に直接つながりさえすれば、その場で回答を得られる可能性が高まります。また、アポイントを取ってから後日じっくり話を聞くことも可能です。BtoB領域において、電話調査は依然として最強のツールの一つです。
電話調査のデメリットと注意点
コストが割高になる傾向がある
オペレーターの人件費、通話料、管理費が発生するため、ネット調査に比べると1回答あたりの単価は高くなります。「とにかく安く大量のデータが欲しい」という目的には向きません。予算と目的のバランスを見極める必要があります。
視覚的な資料を提示できない
電話(音声)だけのやり取りなので、パッケージデザインの評価や、動画広告の感想を聞く調査は不可能です。これらを調査したい場合は、「郵送調査と電話調査の併用」や「ホームユーステスト(HUT)」など、別の手法を組み合わせる必要があります。
電話調査の費用相場と内訳
電話調査の費用は、調査の規模や難易度によって大きく変動します。ここでは一般的な考え方を解説します。
費用の決まり方(コール数・質問数)
見積もりの主な構成要素は以下の通りです。
- 基本料金: 調査設計費、システム設定費、管理費など
- 実査費用: (コール単価 × 架電数) または (回収単価 × 目標回収数)
- スクリプト作成費: 台本作成の難易度による
- 集計・レポート費: 納品物の形式による
特に影響するのが「1件あたりの聴取時間」と「出現率(対象者の見つかりやすさ)」です。 例えば、誰でも答えられる簡単な5分程度の調査と、特定の決裁者につないで20分話を聞く調査では、単価が数倍異なります。
一般的な費用シミュレーション
あくまで目安ですが、以下のような相場感となります。
- 小規模調査(リストあり、100サンプル回収、5問程度) 費用目安:30万円〜
- 大規模調査(RDD方式、500〜1,000サンプル回収、10〜15問) 費用目安:150万円〜
※正確な費用は、調査会社に見積もりを依頼する必要があります。
自社に最適なプランを知りたい方は、お気軽にご相談ください。
電話調査の実施フロー【7ステップ】
効果的な電話調査を行うための標準的な流れを解説します。準備から納品まで、通常は2週間〜1ヶ月程度かかります。
1. 企画・設計
調査の目的を明確にします。「誰に」「何を」「何のために」聞くのかを定義し、調査対象者の条件(スクリーニング条件)や目標サンプル数を決定します。ここがブレると、役に立たないデータになってしまいます。
2. スクリプト(台本)作成
オペレーターが話すための台本を作成します。
- 挨拶と協力依頼
- 質問項目
- 回答に応じた分岐(ロジック) これらをスムーズに流れるように設計します。話し言葉として違和感がないか、入念なチェックが必要です。
3. リスト準備・抽出
リスト方式の場合は顧客リストの整備(クリーニング)を行い、RDD方式の場合は対象エリアや割付(年代・性別などの比率)を設定して番号を生成します。
4. オペレーター教育・研修
調査内容や商品知識について、オペレーターに研修を行います。プロの調査会社では、この研修の質が回答の精度を左右します。想定される質問への切り返しトーク(FAQ)も共有します。
5. 実査(架電)
実際に電話をかけて調査を行います。管理者はリアルタイムで通話内容をモニタリングし、回答の入力ミスがないか、不適切な対応をしていないかチェックします。進捗状況を見ながら、架電時間帯の調整なども行います。
6. データクリーニング・集計
回収したデータから、入力ミスや矛盾データを精査(クリーニング)します。その後、単純集計(GT)やクロス集計を行い、数値データとして整理します。自由回答(OA)はテキスト化し、カテゴライズする「アフターコーディング」を行うこともあります。
7. レポート作成
集計結果をグラフや表にまとめ、分析コメントを加えた報告書を作成します。調査の目的に対する示唆や、次のアクションへの提言が含まれる場合もあります。
成功する電話調査のコツと業者選び
電話調査を成功させるためには、「調査会社選び」が非常に重要です。以下のポイントをチェックしましょう。
質の高いオペレーターがいるか
単に電話をかけるだけでなく、相手の懐に入り込み、本音を引き出すスキルが必要です。経験豊富なオペレーターが在籍しているか、教育体制が整っているかを確認しましょう。
適切なターゲットリストがあるか
BtoB調査などの場合、調査会社が保有しているパネル(調査協力者)の質も重要です。自社のターゲットとなる業界や職種にリーチできるか、事前に相談しましょう。
まとめ
電話調査は、インターネット全盛の現代においても、「信頼性の高いデータ」と「生の声」を得るための代替不可能な手法です。
- 高齢者やネット非利用者の声を聞きたい
- BtoBで決裁者の意見が必要
- 回答の信頼性と深さを重視したい
このような課題をお持ちの場合、電話調査は最適なソリューションとなります。 コストや時間はかかりますが、それに見合うだけの「ビジネスを動かすヒント」が得られるはずです。
もし、「自社の場合、どのくらいの費用でできるのか?」「どんな質問設計が良いのか?」と迷われたら、まずはプロフェッショナルに相談することをおすすめします。
市場調査の目的に合わせた最適な調査設計をご提案します。 まずは無料相談をご活用ください。
よくある質問(FAQ)
Q:電話調査の回答率はどのくらいですか?
A:対象者や質問内容によりますが、一般的にRDD方式(無作為)で数%〜10%程度、既存顧客リストへの架電であれば20%〜50%以上の回収率が見込めることもあります。BtoBの場合は関係性により大きく変動します。
Q:個人情報の取り扱いは大丈夫ですか?
A:信頼できる調査会社は、プライバシーマークの取得やISO等のセキュリティ基準に準拠し、厳重に管理しています。調査終了後はリストや個人情報を適切に破棄します。
Q:録音データをもらうことはできますか?
A:はい、可能です(オプション費用がかかる場合があります)。生の声を聞くことで、会議での説得力が増したり、テキストでは伝わらないニュアンスを把握できたりするため、納品を希望される企業様も多いです。
Q:少数のサンプルでも依頼できますか?
A:可能です。例えばBtoBの競合調査などでは、数十件の深いヒアリングが重要視されることもあります。小規模から大規模まで、目的に応じて柔軟に対応可能です。
Q:調査期間を短縮することはできますか?
A:オペレーターの人数を増やすことで期間短縮が可能です。ただし、急ぎの場合は特急料金が発生することもあるため、余裕を持ったスケジュールでの相談をおすすめします。
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