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2025/12/10

市場調査のやり方完全ガイド!基本の5ステップと手法の選び方を徹底解説

市場調査のやり方を5つのステップで解説

市場調査は、ただ漫然とアンケートを配るだけでは成功しません。精度の高い結果を得るためには、事前の準備と設計が全体の8割を決めると言っても過言ではありません。ここでは、市場調査を実施するための標準的なフローを5つのステップに分けて解説します。 

 

1. 調査目的と仮説の明確化

最初のステップであり、最も重要なのが「なぜ調査をするのか(目的)」と「何が起きていると考えられるか(仮説)」を明確にすることです。 

多くの企業が陥りがちな失敗例として、「とりあえず顧客の声を聞きたい」という漠然とした動機でスタートしてしまうケースがあります。これでは質問項目がブレてしまい、得られたデータから具体的なアクションプランを導き出せません。 

課題と解決策: 

  • 課題: 目的が曖昧で、何を聞けばいいかわからない。 
  • 解決策: ビジネス上の課題を特定し、それを検証するための仮説を立てる。 

具体例: 

  • ビジネス課題: 新商品Aの売上が伸び悩んでいる。 
  • 調査目的: ターゲット層における認知度と、購入に至らない障壁を特定する。 
  • 仮説: 「商品の機能は評価されているが、価格が高すぎて若年層が購入を見送っているのではないか?」 

このように仮説を立てることで、「機能への満足度」と「価格受容性」を聞くべきだという方針が定まります。 

 

2. 調査計画の策定

目的と仮説が固まったら、それを実行に移すための具体的な計画(リサーチデザイン)を策定します。ここでは「誰に」「いつ」「どのように」「いくらで」調査を行うかを決定します。 

特に重要なのが「調査対象者(ターゲット)」の設定です。自社の商品ターゲットと調査対象がズレていると、全く意味のないデータになってしまいます。 

検討すべき項目: 

  • 対象者(Who): 年代、性別、居住地、職業、特定商品の利用経験など。 
  • 手法(How): ネットリサーチ、インタビュー、会場調査など(後述)。 
  • サンプルサイズ(Scale): 何人から回答を得るか。統計的な信頼度と予算のバランスで決定します。 
  • スケジュール(When): 企画から納品までの期間。 
  • 予算(Cost): 外部委託費や謝礼などのコスト。 

例えば、全国規模の認知度調査なら数千人規模のネットリサーチが必要ですが、既存ユーザーの深い不満を知りたいなら10人程度のインタビュー調査が適しています。 

 

3. 調査票(アンケート)の設計

調査計画に基づき、具体的な質問文(調査票)を作成します。ここは専門的なノウハウが求められる部分であり、質問の聞き方一つで回答結果(データ)が変わってしまう恐れがあります。 

注意すべきポイント: 

  • 誘導尋問を避ける: 「この商品は便利だと思いますか?」ではなく「この商品についてどう思いますか?」と聞く。 
  • MECE(漏れなくダブりなく)を意識する: 選択肢に抜け漏れがないようにする。「その他」を設けるなどの配慮が必要です。 
  • 回答負荷を下げる: 質問数が多すぎたり、記述式ばかりだと回答者が疲れて適当な回答をしてしまう「回答疲れ」が発生します。 

具体例: 悪い例:「あなたは日頃、コーヒーや紅茶を飲みますか?(はい・いいえ)」 → コーヒーは飲むが紅茶は飲まない人は答えられません。 改善例:「あなたが日頃飲むものをすべて選んでください。(複数回答)」 

質の高い調査票を作ることは、正確な現状把握への第一歩です。 

 

4. 実査(データ収集)

調査票が完成したら、実際に調査を行います(実査)。近年ではWebアンケートシステムを利用したネットリサーチが主流ですが、街頭調査や郵送調査など、ターゲット属性に合わせて最適な手段を選びます。 

実査の段階で重要なのは「品質管理」です。Webアンケートの場合、回答時間が極端に短い回答や、すべての選択肢で一番上を選んでいるような「不誠実な回答」が混ざることがあります。これらを検知し、データクリーニング(無効データの削除)を行うことで、データの信頼性を担保します。 

また、インタビュー調査などの定性調査では、モデレーター(進行役)のスキルが重要になります。対象者の本音を引き出すための雰囲気作りや、深掘りの質問(ラダーリング)技術が求められます。 

 

5. 集計・分析・レポーティング

データが集まったら、集計と分析を行い、最終的なレポートにまとめます。数字の羅列を見るだけでは意味がありません。最初のステップで立てた「仮説」が正しかったのかどうかを検証します。 

主な集計方法: 

  • 単純集計(GT): 質問ごとの回答比率を見る(例:男性の50%が満足と回答)。 
  • クロス集計: 性別や年代別、利用頻度別などで掛け合わせて傾向を見る(例:20代女性は満足度が高いが、50代男性は低い)。 

分析からのアクション: 分析結果から「20代女性に支持されている」とわかれば、「広告媒体を若年層向けのSNSに集中させる」といった具体的なアクションプランが策定できます。 

調査結果はゴールではなく、次の戦略のスタートラインです。 

 

【手法別】市場調査の主な種類と特徴

市場調査のやり方を理解する上で欠かせないのが、「定量調査」と「定性調査」の使い分けです。これらは車の両輪のような関係で、目的に応じて選択、あるいは組み合わせる必要があります。 

 

定量調査(数値で把握する)

定量調査とは、結果を「数値」や「量」で把握する調査手法です。「全体の何%が購入したいと言っているか」「満足度は10点満点中何点か」といった全体像を把握するのに適しています。 

主な手法: 

  • ネットリサーチ: インターネットを通じてアンケートを行う。低コスト・短期間で大量のサンプルを集められる最も一般的な手法。 
  • 会場調査(CLT): 指定の会場に対象者を集め、実際の商品を見たり試食したりしてもらった上でアンケートに答えてもらう。 
  • ホームユーステスト(HUT): 対象者の自宅に商品を送り、一定期間使用してもらった感想を集める。 

活用シーン: 

  • 市場規模の把握 
  • 認知度調査 
  • 新商品の受容性評価(価格テストなど) 

定量調査は、統計学的な根拠を持って意思決定を行うための基礎データとなります。 

 

定性調査(心理を深掘りする)

定性調査とは、対象者の言葉、行動、感情といった「数値化できない情報」を把握する手法です。「なぜその商品を選んだのか」「どのような生活背景があるのか」といった、行動の背後にある理由(インサイト)を探るのに適しています。 

主な手法: 

  • グループインタビュー(FGI): 5〜6人の対象者を集め、座談会形式で意見を出し合ってもらう。参加者同士の刺激による相乗効果が期待できる。 
  • デプスインタビュー(IDI): 調査員と対象者が1対1でじっくり対話する。デリケートな話題や、個人の深い心理を探るのに有効。 
  • 行動観察調査(エスノグラフィ): 対象者の自宅や買い物現場に同行し、無意識の行動を観察する。 

活用シーン: 

  • 新商品開発のアイデア出し 
  • ペルソナ(顧客像)の具体化 
  • 定量調査で見えた課題の「原因」解明 

定性調査は、数値データだけでは見えてこない「顧客のリアルな姿」を浮き彫りにします。 

 

調査手法の選び方と組み合わせ

市場調査を成功させる鍵は、調査目的と予算に合わせて最適な手法を選ぶことにあります。 

比較項目 定量調査 定性調査 
わかること 「どれくらい?(実態・傾向)」 「なぜ?(理由・背景)」 
データの形式 数値、グラフ テキスト、発言録、写真 
サンプル数 多い(100〜数万) 少ない(数名〜数十名) 
代表的な手法 ネットリサーチホームユーステスト会場調査インタビュー 調査

おすすめの組み合わせフロー: 

  • 【仮説構築】定性調査 まず数名のインタビューを行い、顧客のニーズや不満の種を探り、仮説を立てる。 
  • 【仮説検証】定量調査 その仮説が市場全体に当てはまるのか、数百人規模のアンケートで数値的に検証する。 

このように、定性と定量を組み合わせることで、より説得力のあるマーケティング戦略を立案できます。 

 

市場調査を成功させるための重要ポイント

市場調査のやり方を形式的に踏襲するだけでは不十分です。成果を出すためには以下のポイントを意識してください。 

1. 調査結果をどう使うか事前に決めておく 「結果が出てから考えよう」ではなく、「Aという結果ならプランα、Bという結果ならプランβを実行する」というように、意思決定の基準を設けておきましょう。 

2. 客観性を保つ 自社商品に愛着があるあまり、都合の良い結果が出るような質問文を作ってしまうことがあります(確証バイアス)。第三者の視点を入れることが重要です。 

3. スピード感を意識する 市場のトレンドは日々変化しています。半年かけて調査しても、結果が出る頃には状況が変わっているかもしれません。クイックな調査を繰り返すアジャイルな姿勢も大切です。 

 

調査会社に依頼するメリット

ここまで市場調査のやり方を解説してきましたが、自社だけですべて完結させるには、専門知識と膨大なリソースが必要です。 

多くの企業が専門の調査会社(リサーチ会社)を活用している理由には、以下のようなメリットがあります。 

  • 設計のプロがいる: バイアスのない適切な調査票を作成し、有効なデータを収集できます。 
  • 大規模パネルへのアクセス: 自社ではリーチできない属性(例:競合他社のユーザーなど)に対しても調査可能です。 
  • 客観的な分析: 第三者視点での冷静な分析レポートが得られます。 
  • 業務効率化: 煩雑な実査や集計業務をアウトソースし、担当者は「戦略立案」に集中できます。 

特に初めて本格的な市場調査を行う場合は、プロの知見を借りることで、失敗のリスクを最小限に抑えられます。 

 

まとめ

市場調査のやり方は、以下の5ステップが基本となります。 

  • 目的と仮説の明確化 
  • 調査計画の策定 
  • 調査票の設計 
  • 実査(データ収集) 
  • 集計・分析 

「何を知りたいか」に合わせて、定量調査と定性調査を適切に使い分けることが重要です。正確な市場調査は、ビジネスの不確実性を減らし、成功確率を高めるための強力な武器になります。 

自社だけで調査設計を行うのが難しい、あるいはより精度の高いインサイトを得たいとお考えの場合は、ぜひ専門家のサポートをご検討ください。 

市場調査の目的に合わせた最適な調査設計をご提案します。 まずは無料相談をご活用ください。 お問い合わせはこちら 

 

よくある質問(FAQ)

Q:市場調査にはどれくらいの費用がかかりますか? 

A: 調査手法や対象人数によって大きく異なります。簡易的なネットリサーチであれば数万円〜十数万円から実施可能ですが、大規模な会場調査や詳細なインタビュー調査の場合は数十万円〜数百万円かかることもあります。まずは予算感を伝えて見積もりを取ることをお勧めします。 

Q:調査期間はどのくらい見ておけば良いですか? 

A: ネットリサーチの場合、設問設計から納品まで最短で1週間程度で可能な場合もあります。インタビュー調査や郵送調査などは、リクルーティングや実査に時間がかかるため、1〜2ヶ月程度を見込んでおくと安心です。 

Q:自社の顧客リストに対してアンケートを行いたいのですが可能ですか? 

A: 可能です。ただし、個人情報の取り扱いに十分な配慮が必要です。調査会社に依頼する場合、個人情報を適切に管理した上で、配信代行や集計のみを委託することもできます。既存顧客への調査は、NPS(顧客推奨度)の計測などにも有効です。 

Q:調査結果の分析まで依頼できますか? 

A: はい、多くの調査会社ではデータ収集だけでなく、集計・分析・レポート作成まで一貫して対応しています。「どのような切り口で分析すれば良いかわからない」という場合でも、プロのリサーチャーが目的に沿った分析レポートを提供します。 詳しくはサービスサイトなどもご覧いただき、どのようなサポートが可能かご確認ください。 

 

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