COLUMNコラム
調査方法の種類一覧|市場調査を検討する方のための基礎ガイド
調査方法の種類を理解する前に押さえたいポイント
市場調査の基本プロセスと調査方法の位置づけ
市場調査の現場では、「とりあえずアンケートを取りたい」「インタビューをやりたい」と“手法先行”で話が進みがちです。しかし、調査方法はあくまで「手段」であり、目的や仮説によって最適な手法はまったく変わります。まずは①調査目的の明確化 → ②対象者・範囲の定義 → ③必要なアウトプットの整理 → ④調査方法の選定、というプロセスを押さえることが重要です。この流れを意識することで、「どの調査方法を組み合わせれば、経営判断に使えるデータが集められるか」を逆算できるようになります。調査方法一覧を眺める前に、自社の課題が「市場規模を知りたい」「顧客の本音を深掘りしたい」「施策の効果を検証したい」のどれに近いのか、整理するところから始めましょう。
調査方法の主な種類(一覧)
アンケート調査(インターネット・紙・郵送)
アンケート調査は、最も一般的な定量調査の方法です。Webフォームを使うインターネットリサーチ、自社顧客へのメール配信、来店客に紙で配布する方式、郵送で回収する方式などがあります。課題としては、「とりあえず満足度アンケートを配って終わり」になりやすく、設問設計が甘いと意思決定に使えない数字だけが積み上がる点です。解決策として、目的から逆算して「どの指標をKPIとして見たいか」「どの属性でクロス集計したいか」を先に決め、そのための設問・選択肢を設計します。例えば、解約要因の把握であれば、「継続意向」「不満点」「利用頻度」などを数値で取ることで、改善すべき優先度を定量的に判断できます。
インタビュー調査(個別・グループインタビュー)
インタビュー調査は、少人数の対象者から深いインサイトを引き出す定性調査の代表的な手法です。1対1でじっくり話を聞くデプスインタビュー(個別インタビュー)と、4〜6名程度で議論してもらうグループインタビュー(FGI)がよく使われます。課題は、「担当者が聞きたいことだけを聞いてしまい、顧客の本音まで辿り着かない」「サンプル数が少ないため、全体像と混同してしまう」点です。解決策として、事前に仮説ベースのインタビューフローを作成し、①行動の事実 → ②その時の感情 → ③背景にある価値観、という順で掘り下げることが有効です。例えば新サービス開発なら、「なぜ現行サービスに乗り換えなかったのか」「検討時にどんな不安があったか」を時系列で深掘りすることで、仕様だけでは見えない障壁を発見できます。
観察調査・行動ログ調査
観察調査は、対象者の発言ではなく「実際の行動」を見るための手法です。店舗での購買行動を観察したり、アプリの利用ログやサイトのアクセスログを分析する行動ログ調査などが含まれます。アンケートでは「よく使っている」と答えていても、ログを見ると実際は月1回しかアクセスしていない、といった“言行不一致”を発見できるのが強みです。一方で、観察だけでは「なぜその行動になったのか」という理由までは分かりにくいという課題があります。そこで、観察調査で行動パターンの仮説を立て、その後インタビューで理由を深掘りする、といった組み合わせが解決策となります。例えばECサイトなら、「カート投入後に離脱するユーザー」をログで特定し、そのユーザーにインタビューすることで、UIや価格以外の隠れた要因を探ることができます。
デスクリサーチ(二次データ活用)
デスクリサーチは、自社で新たにデータを集めるのではなく、既存の統計データや公開調査、業界レポートなどを収集・分析する調査方法です。総務省統計局の各種統計や、業界団体の白書、シンクタンクのレポートなどが代表例です。課題は、「情報量が多すぎてどこを見ればよいか分からない」「自社ターゲットと統計の区分が完全には一致しない」ことです。解決策として、①まずはマクロな市場規模・人口動態を把握し、②次に自社ターゲットに近い属性条件で絞り込み、③足りない部分を一次調査(アンケートやインタビュー)で補う、というステップで使うのが効果的です。新規市場への参入検討では、まずデスクリサーチで「参入余地のある市場か」を粗く把握し、その後、消費者ニーズを一次調査で確かめる、という流れが現実的です。
実験調査・テストマーケティング
実験調査は、要因と結果の因果関係を検証するための調査方法です。代表例として、広告クリエイティブや価格を変えたA/Bテスト、店頭POPの有無による売上差の検証、新機能のベータテストなどが挙げられます。課題は、「実験条件を統制できていないため、どの要因が効いたのか分からない」「サンプル数が少なく、結果が偶然かどうか判断しづらい」点です。解決策として、比較対象(コントロール)を必ず用意し、その他の条件をできるだけ揃えた上で、十分なサンプル数を確保することが重要です。例えばキャンペーンバナーの検証なら、同じ期間・同じターゲットに対してAパターンとBパターンをランダムに表示し、クリック率やCV率の差を統計的に検証します。これにより、「担当者の勘」ではなくデータに基づいた施策改善が可能になります。
定量調査と定性調査の違い
定量調査の特徴と向いているテーマ
定量調査は、「どのくらい」「どれが多いか」といった“量”を数値で把握するための調査です。アンケート調査やログ分析、実験調査などが代表例で、サンプル数を確保して統計的に分析できる点が強みです。市場規模の推計、属性別の満足度比較、利用率や認知度の把握など、「社内で数字を示して説明したい」テーマに向いています。一方、「なぜそう感じるのか」「どんなプロセスで意思決定したのか」といった深い理由までは分かりづらい課題があります。そのため、解決策としては、調査設計の段階で“仮説”をしっかり立て、その仮説を検証するための設問・選択肢・スケールを設計することが重要です。例えば、「解約理由はサポートの不満だ」という仮説があるなら、サポート対応の評価項目を細かく分けて質問し、他要因との相対比較ができるように設計します。
定性調査の特徴と向いているテーマ
定性調査は、インタビューやグループディスカッション、エスノグラフィー(生活観察)などを通じて、対象者の「考え方・価値観・ストーリー」を深く理解するための方法です。強みは、まだ企業側が気づいていない“意味”や“文脈”を発見し、新しいコンセプトやアイデアにつなげられることです。新カテゴリの商品開発、顧客ペルソナの具体化、ブランドに対するイメージ構造の把握など、「数字になる前のモヤモヤしたニーズ」を把握したいテーマに向いています。ただし、サンプルが少ないため、得られた意見をそのまま全体に一般化するのは危険です。解決策として、インサイトから仮説を導き、それを後続の定量調査で検証する“定性→定量”の流れを意識することが重要です。例えば、インタビューで見えてきた「隠れた購入理由」を基に選択肢を作り、全国調査でどの理由がどの層にどの程度当てはまるのかを確認する、といった組み合わせが効果的です。
調査方法の選び方(目的別のおすすめ組み合わせ)
新商品・新サービス開発時
新商品・新サービス開発では、「そもそも本当にニーズがあるのか」「どんなコンセプトなら刺さるのか」「価格はいくらなら受け入れられるのか」と、検討すべきテーマが多岐にわたります。課題は、いきなり全国アンケートを実施しても、前提となるアイデアが弱ければ意味のある結果が得られないことです。解決策として、①デスクリサーチで市場規模や競合状況を把握 → ②ターゲット候補へのインタビューで課題や価値観を深掘り → ③得られたインサイトからコンセプト案を複数作成 → ④コンセプト評価アンケートでどれが有望かを定量的に検証、という流れをおすすめします。例えばBtoCサービスであれば、初期段階は10〜20名のインタビューで「日々の面倒なこと」「お金を払っても解決したいこと」を探り、その後、全国1,000サンプルのWeb調査で、「どの課題がどの属性にどの程度広がっているか」を測る、といった組み合わせが現実的です。
既存顧客満足度・解約要因の把握
既存顧客の満足度や解約要因を把握する目的では、「スコアはあるが、具体的に何を改善すべきか分からない」という悩みがよく聞かれます。CS調査の課題は、NPSや満足度を聞くだけで終わり、改善の打ち手に落ちないことです。解決策として、①定量調査で全体の満足度・重要度を測定しボトルネック領域を特定 → ②不満を感じている層へのインタビューで原因を深掘り → ③改善案をABテストで検証、という三段構えが有効です。具体例として、サブスクサービスで「サポートへの不満」が浮かび上がった場合、サポート利用経験者にインタビューを行い、「問い合わせ前にどんな情報を探したか」「なぜチャットではなく電話を選んだか」など、行動の裏側を掘り下げます。その結果をもとにFAQの再設計やチャットボット導入を行い、導入後は解約率や問い合わせ件数の変化をログで検証します。
ブランディング・認知度の把握
ブランド調査では、「認知度は上がっているが、ブランドイメージが狙いとズレている」「広告の投下が本当にブランド価値向上につながっているか分からない」といった課題が多く見られます。ここでは、定量・定性の組み合わせが特に重要です。まず、定量調査で「純粋想起・助成想起」「好意度」「推奨意向」「連想されるイメージワード」などを測定し、自社ブランドのポジションを数値で把握します。その上で、ターゲット層へのグループインタビューを通じて、「なぜそのイメージがついているのか」「競合と比べてどこが違うと感じているのか」を深掘りします。例えば、「高品質だが敷居が高い」というイメージが強い場合、広告表現や店舗体験、価格帯など、どの接点がその印象を形成しているかをインタビューで探り、施策立案につなげます。
調査会社に依頼するメリットと内製との使い分け
調査会社に頼るべきケース
最近は、無料アンケートツールやアクセス解析ツールの普及により、「調査は自分たちでできそう」と感じる企業も増えています。一方で、実務では「設問設計をミスして、欲しかったデータが取れなかった」「回収したデータの解釈で社内が割れてしまった」といった課題がよく起こります。調査会社に依頼するメリットは、①目的に沿った調査設計(誰に、何を、どのように聞くべきか)をプロの視点で行えること、②自社顧客以外のパネルにアクセスできること、③分析・レポートまで一気通貫でサポートしてもらえることです。特に、新市場参入やブランド調査など、経営判断に直結するテーマでは、第三者の中立的なデータと専門的な分析が重要になります。自社での対応が難しい場合は、市場調査サービスの紹介ページのようなサービス内容を参考にしながら、専門会社への相談を検討するとよいでしょう。
内製と外注を組み合わせるポイント
限られた予算の中で調査を行うには、「すべて外注」か「すべて内製」という二択ではなく、両者の組み合わせを考えることが現実的です。例えば、社内の顧客アンケートや簡易なABテストは内製で行い、設問設計や結果の分析だけを調査会社にスポットで依頼する、といった形です。課題は、内製と外注の役割分担が曖昧なまま進めてしまい、スケジュール遅延や認識のズレが起きることです。これを防ぐ解決策として、①調査の目的・ゴールとなるアウトプットを社内でまず明確にする、②どこまでを自社で担い、どこからを外注するかを事前に定義する、③調査会社には“相談相手”として早期に入ってもらう、の3点が重要です。特に初めて本格的な市場調査を行う場合は、設計段階からプロと一緒に検討することで、ムダのない調査計画を立てることができます。
'調査方法選定の成功事例と失敗パターン
BtoCメーカーの成功事例
あるBtoC日用品メーカーでは、新カテゴリー参入のために調査を検討していました。当初は「全国1万人アンケートで市場の反応を見たい」という要望でしたが、調査会社との議論の中で、まずニーズの質的理解が必要だと整理し直しました。そこで、①デスクリサーチで競合カテゴリーと人口動態を把握 → ②ターゲット層20名へのデプスインタビューで生活課題を深掘り → ③得られたインサイトから3つのコンセプトを作成 → ④全国1,200サンプルのWeb調査でコンセプト評価を実施、という設計に変更しました。その結果、当初有望だと考えていた案ではなく、インタビューで見えてきた“予想外の利用シーン”に基づくコンセプトが最も高評価となり、実際の発売後も売上目標を大きく上回る成果につながりました。手法ありきではなく、「段階ごとに必要な問いに答えるための調査方法を選んだ」ことが成功要因といえます。
よくある失敗パターンと回避策
調査方法の選定でよくある失敗は、大きく3つあります。1つ目は、「1回のアンケートで全部分かろうとする」ケースです。質問数が多すぎて回答率が下がり、どのテーマも中途半端な結果になりがちです。テーマごとに調査を分けるか、優先度の高い問いに絞り込むことが解決策となります。2つ目は、「サンプルが偏っている」ケースです。自社会員だけに聞いてしまい、市場全体の傾向とズレてしまうことがあります。外部パネルの活用や、統計情報との比較が有効です。3つ目は、「結果の解釈が独り歩きする」ケースです。少数のインタビュー結果を全体の真実のように扱ったり、相関関係を因果関係と誤解したりするリスクがあります。これを防ぐには、定性・定量を組み合わせ、複数の手法で結果をクロスチェックする設計が重要です。調査設計の段階で、どの結果をどのように意思決定に使うかを明文化しておくと、社内合意も取りやすくなります。
最適な調査方法をプロと一緒に設計しませんか?
調査方法には多くの種類があり、目的や予算、スケジュールによって最適な組み合わせは変わります。自社だけで設計すると、「やってみたものの、意思決定に使えない結果だった」というリスクもあります。
市場調査の目的に合わせた最適な調査設計や、定量・定性調査の組み合わせ方をご提案します。テーマやご予算感だけでも構いませんので、まずは無料相談をご活用ください。
まとめ
本記事では、代表的な調査方法の種類(アンケート、インタビュー、観察調査、デスクリサーチ、実験調査)と、定量・定性調査の違いを整理しました。あわせて、目的別のおすすめの組み合わせ方や、調査会社に依頼するメリット、よくある失敗パターンとその回避策もご紹介しました。
調査方法選びで迷ったときは、「どんな意思決定に使うのか」から逆算して、必要な情報を得るための手段を設計することが重要です。プロのサポートを受けながら、自社に最適な調査設計を検討したい方は、ぜひ下記よりご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q:市場調査にはどんな調査方法の種類がありますか?
A:代表的なものとして、アンケート調査(Web・紙・郵送)、インタビュー調査(個別・グループ)、観察調査・行動ログ調査、デスクリサーチ(二次データ調査)、実験調査・テストマーケティングなどがあります。多くの場合、1つだけでなく複数の手法を組み合わせて実施します。
Q:定量調査と定性調査は、どちらから先に行うべきですか?
A:新商品開発など、まだ仮説が固まっていない段階では「定性→定量」の順が一般的です。インタビューなどの定性調査でインサイトや仮説を抽出し、その妥当性や市場全体での広がりを定量調査で検証します。一方、満足度の変化など、すでに指標があるテーマでは定量調査から始めるケースもあります。
Q:自社でアンケートツールを使う場合でも、調査会社に相談するメリットはありますか?
A:あります。ツールが使えても、設問設計やサンプル設計、結果解釈を誤ると、意思決定に使えないデータになってしまいます。調査会社に設計や分析だけをスポットで依頼することで、内製のコストメリットを活かしつつ、調査の精度を高めることができます。
Q:市場調査の費用感や相場はどのくらいでしょうか?
A:調査方法やサンプル数、対象エリア、分析レベルによって大きく変わります。簡易なWebアンケートであれば数十万円規模、本格的な全国調査やインタビュー+アンケートの組み合わせでは数百万円になるケースもあります。テーマとご予算に応じた設計が可能ですので、まずはお問い合わせの際に「知りたいこと」と「想定予算」をお知らせください。
Q:どの調査方法を選べばよいか分からないのですが、相談だけでも可能ですか?
A:もちろん可能です。調査目的や社内で抱えている課題、過去に実施した調査の有無などをヒアリングし、目的達成に必要な情報から逆算して最適な調査方法の組み合わせをご提案します。まずはお気軽に、下記フォームよりご相談ください。
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