COLUMNコラム
市場調査の期間はどのくらい?手法別のスケジュール目安と短縮のコツ
「いつ結果が出る?」市場調査の期間目安【手法別一覧】
市場調査にかかる期間は、採用する「手法」によって劇的に異なります。 まずは、代表的な5つの調査手法について、企画開始から納品までの一般的な標準期間を押さえておきましょう。
インターネットリサーチ(Webアンケート):最短1週間〜3週間
現在、最も多くの企業で行われている手法です。モニター(回答者)に対してWeb上でアンケートを配信・回収します。
- スピード感: 最も早いです。 システムで自動的に配信・回収を行うため、設問さえ決まれば、実査(回答期間)自体は24時間以内で数千サンプルを集めることも可能です。
- 最短ケース: 設問案が既にあり、ローデータ(数字だけのデータ)のみ納品の場合、3〜5営業日。
- 通常ケース: 調査会社と相談しながら設計し、分析レポートまで作成する場合、3週間程度。
グループインタビュー(FGI)・デプスインタビュー:1ヶ月〜2ヶ月
対象者を会場やオンライン会議室に招き、モデレーターが直接話を聞く定性調査です。
- スピード感: 対象者選び(リクルーティング)と日程調整に時間がかかります。
- ポイント: 「30代で特定の商品を使っている人」など条件に合う人を探し出し、参加の承諾を得て、日程を調整するプロセスに約2〜3週間を要します。実査(インタビュー)自体は数日で終わりますが、その後の発言録作成や分析にさらに時間がかかります。
会場調査(CLT):1.5ヶ月〜3ヶ月
指定の会場に対象者を集め、目の前で商品パッケージや試作品を見てもらい、アンケートに答えてもらう手法です。
- スピード感: 会場の確保や、商品サンプルの手配といった物理的な準備が必要です。
- ポイント: 会場の空き状況に左右されるほか、試飲・試食がある場合は保健所への申請等が必要になることもあり、準備期間が長くなる傾向があります。
ホームユーステスト(HUT):2ヶ月〜3ヶ月
対象者の自宅に商品を送り、一定期間(数日〜数週間)実際に使ってもらった後にアンケートに答えてもらう手法です。化粧品や健康食品などでよく使われます。
- スピード感: 「使用期間」が含まれるため、調査全体の期間は長くなります。
- ポイント: 商品の発送・受取確認の手間がかかるほか、「1週間使い続けてどう変化したか」を見る場合、物理的に実査期間を短縮することは不可能です。
郵送調査:2ヶ月〜3ヶ月
紙のアンケート用紙を郵送し、記入して返送してもらう手法です。インターネットを使わない高齢者層への調査や、自治体の調査などで利用されます。
- スピード感: 郵送の往復時間と、データ入力(紙からデジタルへの転記)の手間がかかるため、最も時間がかかります。
調査期間の内訳とは?4つの工程と所要日
全体の期間だけでなく、「どの工程にどれくらい時間がかかるのか」を知っておくと、社内調整がスムーズになります。ここでは、最も一般的な「インターネットリサーチ」を例に、プロセスの内訳を解説します。
1. 企画・調査票設計(3日〜1週間)
【何をする工程?】 調査の目的を明確にし、具体的な質問文(調査票)を作成するフェーズです。
【時間の使いどころ】 実はここが一番重要です。 「とりあえずアンケートを取りたい」と急いで進めると、「本当に聞きたかったことが聞けていない」「選択肢に漏れがある」といったミスが起きがちです。調査会社からの提案を受け、修正・確認を行うラリーが数回発生するため、余裕を見て1週間程度確保するのが理想です。
2. 準備・リクルーティング(2日〜2週間)
【何をする工程?】 確定した調査票をWebアンケート画面(プログラム)に入力し、動作確認を行います。 また、インタビュー調査の場合は、この期間に対象者の募集(スクリーニング)と日程調整を行います。
【時間の使いどころ】 ネットリサーチの場合、画面作成は1〜2日で済みますが、リンクの遷移ミスや誤字脱字がないかのチェック(検収)を丁寧に行う必要があります。ここでミスが見つかると、修正に時間を取られます。
3. 実査・データ回収(1日〜数週間)
【何をする工程?】 実際にアンケートを配信し、回答を集める期間です。
【時間の使いどころ】 ネットリサーチであれば、一般的な属性(性別・年代など)なら数日で目標数(例:1,000サンプル)が集まります。 しかし、「特定のマニアックな趣味を持つ人」など出現率が低いターゲットの場合、目標数を集めるのに時間がかかり、1週間以上待つケースもあります。
4. 集計・分析・レポート作成(3日〜10日)
【何をする工程?】 集まったデータをクリーニング(不正回答の削除など)し、集計表やグラフ、分析レポートを作成します。
【時間の使いどころ】 単純な集計表(GT表・クロス集計表)だけであれば数日で納品されますが、「調査結果から言えること(考察)」を含んだ詳細なレポートを求める場合、アナリストの作業時間として1週間程度必要になります。
スケジュールが延びてしまう「よくある原因」と対策
調査会社側はスケジュール通り動いていても、依頼主(企業側)の事情や設計上の問題で納期が遅れることがあります。これらは「事前の知識」があれば回避可能です。
社内確認・承認フローでの停滞
最も多い遅延理由がこれです。 担当者レベルではOKでも、上司の確認待ちで3日ストップ、修正指示が入ってさらに2日ストップ……と、実務以外の部分で時間が経過してしまいます。
対策: 調査開始前に、「誰が最終決定権を持つのか」を確認し、承認者のスケジュールを押さえておきましょう。「〇日までに確認いただけないと、納期が〇日遅れます」と事前にアラートを出すのも有効です。
出現率の低い「レアターゲット」の指定
「週に5回以上、特定のマイナーな輸入菓子を食べる人」といった、出現率が1%を切るようなターゲット設定にすると、回答者がなかなか集まりません。
対策: 企画段階で調査会社に「この条件で何人くらい集まりそうか(出現率の予測)」を確認してもらいましょう。無理そうであれば、条件を緩和する(例:週1回以上にする)などの調整が必要です。
実査スピードが速い調査会社に相談する
調査画面を作成した後になってから、「やっぱりこの質問も追加したい」「選択肢を変えたい」となると、プログラムの組み直しが発生します。場合によっては追加費用もかかり、スケジュールも数日単位で後ろ倒しになります。
対策: 「調査票の確定(FIX)」をマイルストーンとして重視してください。一度確定したら変更はできない、という認識で社内合意を取りましょう。
急ぎたい時に!調査期間を短縮する3つのポイント
「どうしても来週の会議に間に合わせたい!」 そんな緊急事態に対応するために、品質を落とさずに期間を短縮するテクニックをご紹介します。
調査目的と「マストな質問」を事前に絞り込む
調査会社への相談時に、「あれもこれも聞きたい」と漠然とした状態だと、整理するだけで数日かかってしまいます。 「今回はA案とB案のパッケージ決定のみに集中する」と目的を一点に絞り、質問数を減らすことで、設計・回答・集計すべての時間を短縮できます。
レポートのアウトプット形式を簡素化する
立派なパワーポイントのレポート作成には時間がかかります。 社内会議用の資料を自分で作るリソースがあるなら、納品物は「ローデータ(Excelの数字データ)」と「簡易集計表」のみに留めましょう。これだけで納期を3〜5日短縮できる場合があります。
大規模なパネル(モニター会員)を保有している調査会社や、システム化が進んでいるネットリサーチ専門会社を選ぶことで、実査期間を短縮できます。
余裕のあるスケジュールがもたらす「質の向上」メリット
最後に、あえて「時間をかけること」の重要性についてお伝えします。 短納期は魅力的ですが、スケジュールに余裕を持つことで以下のようなメリットが生まれます。
- 仮説の精度が上がる じっくりと企画を練ることで、「本当にビジネスに役立つ質問」を設計できます。
- 深い分析が可能になる 集まったデータを多角的に分析し、単純集計からは見えない「意外な事実」を発見する時間が生まれます。
- コストパフォーマンスが良くなる 特急料金などがかからず、無駄な質問を削ぎ落とす検討もできるため、費用対効果が高まります。
まとめ
市場調査にかかる期間は、手法や調査内容によって大きく異なります。
- ネットリサーチ:2週間程度(最短数日)
- 定性調査(インタビュー等):1ヶ月〜3ヶ月
- スケジュール遅延の要因:社内確認の停滞、レアなターゲット設定、調査票の手戻り
- 短縮のコツ:目的を絞り込む、納品形式を簡易にする、早めに相談する
「いつまでにデータが必要か」というゴールから逆算して、最適な手法を選ぶことがプロジェクト成功の鍵です。もしスケジュールに不安がある場合は、自己判断せず、まずは調査会社に「この日程で可能か?」と聞いてみるのが一番確実な解決策です。
RJCでは、お客様の「急ぎたい」というご要望にも、品質を落とさずに対応できる柔軟な体制を整えています。 「来月の会議に間に合わせたい」「具体的なスケジュール感を知りたい」といったご相談も大歓迎です。最適なスケジュールと調査プランをご提案しますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくある質問(FAQ)
Q:調査期間を短縮すると、費用は高くなりますか?
A:調査会社によっては「特急料金」が発生する場合があります。また、夜間や休日に対応が必要な場合も割増料金になることがあります。ただし、レポート作成を省略するなどで逆にコストを抑えられるケースもあるため、見積もり時に相談してみましょう。
Q:土日や祝日も調査(実査)は進みますか?
A:インターネットリサーチの場合、システムは24時間稼働しているため、土日祝日でも回答は集まります。むしろ、会社員や学生がターゲットの場合、週末の方が回答スピードが速いこともあります。ただし、調査会社の担当窓口は休業の場合が多いため、トラブル対応などは翌営業日になることが一般的です。
Q:一番時間がかからない調査手法は何ですか?
A:最も早いのは「セルフ型ネットリサーチ」です。ご自身で画面作成や配信設定を行えば、即日で配信開始でき、数時間〜1日で結果を見ることも可能です。ただし、設問設計のノウハウが必要になる点には注意が必要です。
Q:調査開始の何日前に問い合わせれば良いですか?
A:余裕を持つなら、データが必要な日の「3ヶ月前」には問い合わせることをおすすめします。ネットリサーチで急ぎの場合でも、最低「2週間前」には連絡をすると、スムーズに設計・実施が進められます。
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